今回は、古着界隈でかなりの人気を誇るフランス軍m52を素材、作り、歴史などを踏まえて徹底的に研究してみました。
フランス軍 M52とは
フランス軍M52とは、1950年〜1960年代の間フランス軍で採用されていたトラウザーズ、パンツのことです。
ミリタリーのアイテムによくあるM○○というのは採用された年を表しています。なので、M52は1952年に採用されたということになります。
古着界隈はユーロヴィンテージの人気が高まっており、M52も火付け役の一つとされているほど人気です。
古着屋とかではよく「m52」「m52チノ」「52チノ」なんて呼ばれたりしています。
素材はチノクロス素材
素材はチノパンとして有名な厚手のコットンの綾織りであるチノクロス素材です。
が、普通のチノ素材ではありません。
M52は、ただのチノ素材ではなく、ウエストポイント素材で作られています。
ウエストポイント素材とは、米国陸軍ウエストポイント士官学校で使用されていた生地のこと。通常のチノクロス生地は単糸の綾織りに対してウエポン素材は双糸の綾織りとなっている。糸が2本になっている分丈夫さと光沢感がある少し上質なチノ素材のようなもの。
ウエポン素材なのでミリタリーアイテムなのに上質さを感じるパンツになっています。
テーパードシルエット
シルエットは綺麗なテーパードシルエットになります。ウエストにはインプリーツのツータックが施されており、裾にかけてちょうどよくテーパードがかかっています。外国のミリタリーアイテムであることから極太のサイズが多いのですが、タックとテーパードが綺麗なため武骨さは無く、軍パンなのか疑いたくなるようなシルエットです。
様々な国でミリタリーアイテムとして採用されているチノパンですが、M52は他国のパンツと比べても一際綺麗なシルエットです。
トラッドファッションや、古着などを主に掲載しているメンズ雑誌「雑誌2nd」で以前アメリカ軍のチノとM52を解体して調べるという記事がありましたが、M52はパターンがスーツに近い物だったそうです。
色味や縫製など、細かなディティール
サイズ表記はフランス軍特有で、2桁の数字の組み合わせでウエスト、着丈を表しています。
左の数字(3)がレングス、長さを表し右の数字(5)がウエストを表しています。
表記の数字は1〜9まで確認しているので、約80通りのサイズが可能ということになりますが、実際どのくらいサイズ展開があったのかは分かりません。
99なんていう超ビッグサイズなんか流石に無いんですかね。
日本の古着屋では35、24、45といったサイズが多く見られる気がします。
・縫製
縫製は、裏表共に全体的に丁寧な作りです。強度のあるダブルステッチや、ポケット部分のかんぬき止め、スレキの細かなステッチなど大量生産され、軍の業務に使用されるパンツとしてはかなりクオリティの高いものになっています。
スレキとは、洋服の裏地やポケット部分に使用される生地のこと。下画像のポケット部分のことを言います。
・フロントの仕様
前側の股の部分はボタンフライになっています。採用当時にもジッパーは存在していたとは思いますが、まだまだボタンフライが主流だった時代です。
・ポケット
フロントのポケットはデザインに溶け込むシームポケットで、バックポケットはフラップポケットになります。
ポケットの仕様は製造年によって異なる場合があります。バックポケットがストラップポケットになっているものもあり、古着ではストラップが前期型、フラップが後期型と言われています。
古着としての現在の評価
今から60〜70年前はフランス軍に野戦で使用されていたパンツですが、現在はファッションとして使用されています。
近年のユーロヴィンテージブームやオーバーサイズブームにより価格も少しずつ上がっていっています。
2018年ごろ | 販売場所 | 2023年ごろ |
7000円〜12000円 | メルカリやヤフオク | 10000円〜20000円 |
15000円〜20000円 | 古着屋 | 20000円〜 |
フリマサイトは個人間の取引であることや、古着ゆえに明確な定価が無いことから相場はアバウトなものとなっていますが、明らかに価格が上がっていることは確かです。
実際に僕は5年前に8000円で購入しました。
M52デザインの考察
では、なぜ現在こんなに人気であるのか、シルエットや、素材の理由を考察していきます。
素材
生地がウエポン素材である理由は明確です。
それは、野戦用のパンツだからです。
元々フランス軍で野戦用として採用されたパンツであるため、丈夫なウエポン素材、野戦でも目立ちにくいカーキは適した素材です。
今ではこれを履いて電車に揺られてるのに、軍で使われていたなんて考えられないですね。
シルエット
軍用なのにファッション性の高い綺麗なシルエットである理由はいくつか考えられます。
1つ目は実用性です。
インプリーツのツータックは腰回りに程よいゆとりができ、裾にかけてテーパードしていることで裾のもたつきが少なくなっています。
履いていてストレスが少なく、動きやすさもあることがこのシルエットである理由の1つではないかと思います。
実際に履いてみると程よいゆったり感でストレスがありません。
2つ目は当時のフランスではビスポークが主流だったことです。
洋服において1960年〜1970年代ごろに既製服や大量生産が主流となるまでヨーロッパはビスポークが主流だったと言われています。
ビスポークとは、現在でいうオーダーメイドに近い物。ただ、お客が作り手に注文する物では無く、お客と作り手が製品について話し合い新調したり、改変したりするところがオーダーメイドとは少し違う。
ビスポークのように量より質を重視していた服作りの文化が軍パンながら綺麗なシルエットを作り出しているのではないかと考えます。
3つ目はフランスのファッション感度の高さです。
フランスのパリは世界有数のファッション都市と言われており、シャネルやディオールなど世界的に有名なブランドが生まれた都市になります。そういったブランドの輩出や世界的にファッションの最先端をいく国であれば軍のアイテムもおしゃれなのではないかという考えです。
細部など
軍パンであるのに丁寧な縫製や、上質な生地は戦勝国であるからこその余裕でしょうか。
フランスは第一次世界大戦、第二次世界大戦大戦と戦勝国として終え、金銭的な余裕があったのではないかと考えたのですが、、
このフランス軍M52、年代などによって生地や色味が違うことがあります。安定的に生地を揃えることができなかったのでしょうか。
ぜひ有識者の人がいれば教えていただきたいです。
*今回まとめた考察はあくまで私の考えになります。正確な情報などは少しずつ明らかにしていけたらと思います。
こういう感じに服から当時の状況を読み解くのも古着の楽しみですね。
M52のコーディネート例
M52は良い意味で質の良いシンプルなパンツなので春夏秋冬通年着こなせる優秀なパンツです。
冗談抜きで年中ずっと履いています。
M52のコーディネートをいくつか紹介していきます。
jacket: 60s アドルフラフォン モールスキンジャケット shoes:aurora shoes
同じ年代のフレンチヴィンテージのスタイリング。古着好き、ユーロ好きの人なら一度は目にしたことのある定番の組み合わせですが、定番ゆえの収まり感があります。
jacket: 90s barbour beaufoat tops:UNIQLO U shoes: aurora shoes
ヴィンテージのバブアーと色味を寄せたスタイリング。パンツのデザイン自体はシンプルなので少し癖の入ったジャケットなどと合わせてもありです。
jacket: 70s sears cardigan: UNIQLO×MARNI shoes: spalwart
武骨なレザージャケットと合わせるのも良いですね。シルエットの綺麗さが武骨になりすぎずうまくまとめてくれます。
最後に 購入先など
今回はフランス軍M52の紹介をしました。
年々数が減っている人気アイテムなので、取扱店舗は限られているのですが、ユーロヴィンテージ 、ミリタリーアイテムに強い古着屋を探してみてください。
また、意外とセカンドストリートやトレファクスタイルのようなリユースショップにひっそりと置いてあることも多々あるのでぜひチェックしてみてください。
古着、現行を気にせずデザインやディティールを重視する方はサンプリングのパンツもおすすめです。幅広い国のミリタリーアイテムからレアなヴィンテージ 、比較的新しい古着、古着をサンプリングしたオリジナルブランド等を販売しているwaiperさんの M52が特におすすめです。
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